就活でやりたい事を優先してはいけない
重要なのは得意な事を仕事にする事
私は年間何百人の方と面接やセミナー行います。その中でよく就職相談も受けるのですが、やはり一番多いのが、「やりたい事が分かりません」という相談です。
私が不思議に思うのは、人はなぜか就活になると、まるでそこで人生の全てが決まってしまうかの様に急にハードルを上げてしまうのです。就職する事が人生のゴールだとでも思っているのでしょうか。
将来を有望されたアスリートなら別ですが、20歳そこそこの若者が「自分が一生活躍出来そうな魅力的な仕事」に巡り合える可能性なんて本当にごく僅かだと思います。実際に、「やりたい事は何ですか」という質問に即答出来る人は少ないのです。
結論から言うと、就活で優先すべきなのは「やりたい事」ではありません。自分の得意な事を活かせる仕事に就けば、結果的にそれが「本当にやりたい事」に繋がるのです。
やりたい事を優先してはいけない理由
もしあなたが鉄道ファンだとして、鉄道会社の面接で自分の鉄道愛を大いに語り、どうしても鉄道の仕事に携わりたい事をアピールしたとしましょう。そういう人は100%落ちます。
なぜかと言うと、鉄道会社は鉄道だけでなく、観光・ホテル・流通など多くの事業を展開しています。どの部門に配属させるかは当然企業側が決める事です。もし鉄道以外の部門に配属された場合、「鉄道が好きでこの会社に入ったのに、こんなはずじゃなかった。」という事になり、結果的に早期退職に繋がるのです。
企業としては、経験も無いのにやたらやりたい事に拘る人や、ただのファンに対しては、むしろ敬遠する傾向があるのです。
私は学生時代に土砂災害の研究をしており、野外での測量やプログラミングを行い、数学や物理を用いた土壌の安定解析や衛星画像の数値シミュレーション等を行っていたので、かなり専門的な技術を使っていたと思います。しかし、それでも将来やりたい事は何かと聞かれても、当時の自分には分かりませんでした。どんな学校、どんな学部にいようと、本当にやりたい事というのは分からないのです。
「やりたい事を仕事にしよう」というのは、確かに理想的でカッコいい表現だと思いますが、それは広告メディアが創り出したキャッチフレーズに過ぎません。そもそも仕事というのは求職者を満足させる為にあるわけではないのです。
成功している人とは
「成功する」の定義にもよりますが、ビジネスにおいて成功している人というのは、例外なく自分が得意な事を仕事にしているのです。得意だからこそ結果も出て自信に繋がるのです。決してやりたい事をしているから成功している訳ではありません。
スポーツ選手なんて分かりやすいと思います。羽生結弦選手や大阪なおみ選手は、自分の最も得意な事を仕事にしているからこそ評価されているのです。結果が出て評価されているからこそ、結果的にその仕事が好きになり、やりたい事に繋がるのです。要は「本当にやりたい事」というのは、経験や実績を積んでこそ見えてくるものなのです。
私が言いたいのは、「やりたい事なんてするな。夢なんて見るな。」という事ではありません。何の実績もないのに、ただ「○○になりたい」というのは、夢ではなくただの「憧れ」です。もし私がいきなり「歌手になりたい」と言って、今更会社を辞めてどれだけボイストレーニングに打ち込んだとしても、そんな場違いな努力になんの価値もありません。ただの憧れではなく、周りからの評価や実績が伴う「正しい努力」をする事が重要なのです。「夢を持つ」という事は、実績と自信が伴っている状態の事です。就職をする目的は夢を持つためなのです。
出来る事を全てやったにもかかわらず、「それでもやりたい事や自分に合う企業が見つからない」、というのなら仕方ありませんが、そんな事はまずあり得ません。何も行動していないのに、「自分には何が出来るんだろう」なんて自分に酔いしれて就活した気になっている場合ではないのです。
ちなみに私は、「特にこだわりが無いのであれば、最初はIT関係の仕事に就きなさい」とアドバイスするようにしています。これは自分の会社に誘導する為ではなく、もしその仕事が合わなかったとしても、IT関係から営業職への転職は可能ですが、その逆は難しいからです。
得意な仕事は「楽しさ」が上回る
私は若い人から、「木山さんは自分で起業してやりたい事をしているので羨ましいです。」という事をよく言われますが、それはとんでもない誤解です。社長なんてやりたくない事だらけですよ。
中小企業の社長というのは、経営・企画・営業・採用・開発・経理・管理・育成・助成金・書類作成など、全てのポジションを基本1人で回せなくてはいけません。何かあった時に代わりが効かないからです。当然休みや残業なんていう概念もありません。
ではなぜ私が起業してこの仕事をしているかというと、私はこの仕事が得意だからです。
もっと正確に言えば、「やりたいかどうか」という事よりも、この仕事が得意だという事を自覚していて、更に仕事を通じて得られる「成長」や「喜び」が全てを上回っているからです。楽な仕事なんてないですし、良いこと尽くしの仕事もありません。要はデメリットよりもメリットが上回っているからです。何でもそうですが、人生の選択の基準はメリットとデメリットのバランスなのです。
メリットや楽しさが上回っていれば嫌な事があっても続きますし、そうすれば自信と実績に裏付けされた「本当にやりたい事」というのが後から見えてくるのです。だから最初はやりたい事ではなく、得意な事を活かせる仕事に就く事が重要なのです。
私は自分の得意な事を最大限活かした結果、その延長線上にたまたま「起業」という選択肢があったに過ぎません。「一儲けしたい」だとか「自分はサラリーマンに向いてないから」という理由で起業なんてすると必ず失敗します。社長というのはなりたくてなる仕事ではないですから。
この記事へのコメントはありません。