中小企業の生存率は統計のギミック
中小企業の生存率の実態
最近では最初から中堅・中小企業を志望する学生や、企業規模には全く拘らない方が増えています。人によっては適正や今後のキャリアプランを考えた時に、大手より中小やベンチャーの方が早く成長出来る場合があるからです。
企業規模に拘ったところで、実際に大手企業に就職する人は全体の1割程度です。そして残りの9割は中小企業という事になりますが、やはり中小企業に少なからず不安を覚える人もいます。それは中小企業の生存率が主な要因でしょう。
企業の生存率?=起業して3年後40%、5年後15%、10年後6%、20年後0.4%
ネットで検索すると、「企業の生存率」は起業して3年後に40%、5年後15%、10年後6%、20年後0.4%です。やはり中小企業は倒産するリスクが高いのではと感じるかもしれませんが、この数字を鵜呑みにしてはいけません。
こちらは2017年の「中小企業白書」という資料から、創業から5年後までの企業の生存率のグラフとなります。こちらを見ると、創業から5年後の企業の生存率は約82%です。COSMOS2というデータベースには、全国200万社のうち約140万社が登録されているので、ある程度信頼のおける数字だと思われます。
念のため、帝国データバンクからの別の引用データも調べてみましたが、やはり創業から5年後で生存率82%、しかも30年後の生存率は47%と高い数値を出しています。前年の45%から47%に増加しているのは、それまでこのデータベースに登録されていなかった企業が新たに追加された影響だと思われます。
5年後の生存率が15%、10年後で6%というデータは、調べてもソースがハッキリしないので、ネットで一人歩きしている情報の可能性が考えられます。私の周りは起業家だらけですが、「5年後に85%が廃業」というのは実感として正直信じがたい数字です。
人に情報を提供する際は、信頼できる情報源(ソース)が重要となりますが、当然妥当性のある情報機関でなければいけません。ソースが無い情報というのは、ただの主観・思い込みでしかないのです。
心理テストや性格診断テストなどはネットで無料で受けられますが、たまに有料のものがあります。無料と有料の違いは何でしょうか。それは、妥当性のある情報源とデータサンプル量の違いです。有料の診断テストには、必ずその情報源や何を根拠に算出しているかが記載されているのです。100人のサンプルより100万人のサンプルがあった方が、より信憑性の高いデータになるからです。
生存率は統計のギミック
企業の生存率に関しては色々な意見がありますが、この生存率にあまり拘る必要はありません。実は中小企業の生存率というのは、鵜呑みにしてはいけない統計のギミックなのです。
実は中小企業ほど、部門ごとに細かく「分社化」を行っているのです。分社化とは、事業単位で部門を組織から切り分け、独立した子会社を設立する事です。中小企業は利益の上がらない部門(子会社)は切り捨て、好調な部門(子会社)だけを拡大する経営方式をとっているのです。その理由は、もし全ての部門を1つの企業だけで経営していた場合、ある部門で大幅に赤字を出してしまった際に共倒れになるリスクがあるからです。中小企業ほど倒産のリスクを避けるために、細かく分社化する事でリスクヘッジを行っているのです。
あと企業イメージに合わない事業は必ず分社化して経営を行います。例えば中古本や中古家電を扱う「ブックオフコーポレーション」は、レストラン事業を行うために「俺のフレンチ・俺のイタリアン」を別法人で行っているのです。
分社化を行った結果、設立企業が増加し、自然淘汰される企業も増えるので、結果的に企業全体の生存率が極端に下がってしまうのです。様々なトライ&エラーの中でも、会社の母体自体は存続しているケースが多く、本当の意味で倒産している訳ではないのです。
2006年の「新会社法」の成立により、資本金ゼロ円で起業が可能になりました。起業のハードルが下がった結果、無謀なビジネスも増加した分、自然淘汰される会社も増えたという側面も考えられます。
以前「大手企業は実は存在しない魔法の言葉」という記事を書きましたが、大手企業は経営管理(ホールディングス)以外は部門ごとに分社化し、そして分社化した中小企業が更にプロジェクトごとに分社化を行っているのです。今後も企業はどんどん中小にシフトしていきます。だから企業規模で選んではいけないのです。
「富士そば」を経営している「ダイタンフード」という会社がありますが、この会社は出店エリアごとに社内でいくつも分社化を行っているのです。それは、同じ事業でもあえて分社化する事で、社内に競争原理が働くからです。お互いに競争し合う事で生産性に相乗効果を生み出しているのです。
「サイバーエージェント」というIT企業があります。この会社は子会社も合わせて全部で130社ほどで構成されているのですが、実は既に畳んだ子会社もそれと同じくらいあるのです。社内に新規事業を立ち上げる「じぎょつく」「あした会議」という制度があり、携帯アプリやサービス事業ごとにそれぞれ分社化を行っているのです。分社化すると、当然社長や執行役員などが新たに必要となりますが、若手社員を重要なポストに就かせる事で自由と責任を与え、更なる企業の成長を促しているのです。
実は会社と言っても、実際は従業員ゼロの社長1人しかいない会社もとても多いのです。なぜかというと、本来は個人事業主であるはずの職種でも、売上1000万を超えると法人化した方が節税になるからです。だから同じ魚屋さんでも個人事業主だったり株式会社だったりするのです。そのような人が、年齢などの理由で引退するとなると、当然その会社は精算という形になり、結果的に企業の生存率に影響を与える事になるのです。
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